大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「可愛くねーな…こんなお前、俺以外の男が彼氏だったら、ソッコー振られてるぞ」
「フンだ、ご心配なく、そんな私を好きだって言ってくれる人と付き合うから振られないもん」
ベーと舌を出した菜生の言葉に、納得。
どんなに気持ちを伝えても肝心の愛の言葉が抜けていた。
「ななせ…愛してる。そばにお前のいない人生なんて考えられない俺をこんな風にさせた責任とって結婚してくれよ」
初めての愛の告白に、つい照れ臭さから言ってしまった天邪鬼な物言いに、菜生は涙を流している。
止まらない涙を、何度も唇ですくい取りながら、彼女が落ち着くのを待った。
そして出た声はうわずり見っともない。
「…返事は?」
かっこよく決めたかったのに緊張で声はうわずり、俺からの一方通行な行動が彼女を怒らせてしまう。
腕の中で暴れる菜生をぎゅっと抱きしめれば、怒りながらも頬を染める表情に、心から怒っていないと安堵して思わず笑みがこぼれた。
「悪かった。お前の気持ち聞かせて」
頬を膨らませる顔、愛しさから顔中にキスをし、彼女からの言葉を待った。
まぁ、物欲しげな唇は素直に告白したご褒美に取っておく事にしよう。