大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
エピローグ
体に巻きつく腕が邪魔くさく、目が覚めてしまう。
あー、もう…
その腕を持ち上げ、ベッドから抜け出すのは毎日重労働なのだ。
この腕に包まれて眠りにつく前は幸せだと思うのに、朝、この意識のない重量のある腕の重みで目覚めると、つい悪態をつきたくなる。
一緒に住むようになって、幸せだと思わせてくれる彼なのに、毎日奪われた体力の後、この労力は結構体にこたえるから抱きしめて眠るのはやめるように言っているのに、朝になると毎回これだから困る。
はぁー、幸せそうに寝ちゃって…
彼の鼻を軽く摘むと、くしゃくしゃに顔をしかめた後、枕に顔を埋め逃げていく。
朝のちょっとした私からの仕返しだ。
キッチンで、朝の朝食の準備中、眠そうに大きなあくびをし目を擦り起きてくる彼の姿を独り占め。
いい男が台無しだ…
クスッと笑みがこぼれる私の側まで来た彼は、毎回頬にチュッとキスを必ずする。
「菜生、おはよう」
「おはよう、奏」
そして、お互い顔が向き合うと、どちらかともなく唇を合わせ軽くキスをする。
「お腹が空いた」
「もう少しでできるから座って待ってて」
動こうとしないのも、毎回の事。