大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「菜生、時間」

壁時計に目をやり、着替えや、化粧、出社前の朝に準備がかかる私を促してくれるのも、毎日の事。

「やばい」

朝食もそこそこにしてバタバタとしだすのは、私の毎日の光景。

一人暮らしの時には余裕持って行動できたのに、毎日、朝、起きるのが辛いのは誰のせいだと恨めしく奏を睨んでやる。

「…片付けておくから、準備して来い」

ふっと笑い、知り顔で後片付けをしてくれるから文句を飲み込むのも毎回の事。

私が、準備をしている間に洗濯機を回し、干してもくれる。

「ありがとう」

「お前に家政婦をさせる為に一緒に暮らしてるんじゃないんだから、気にするな。お礼なら言葉より態度で示してほしいけどな」

腰を抱きしめ、憎らしく微笑んで待ち構えている唇めがけてした感謝のキスが、簡単なもので終わらないのもわかっているのに、しなければ離してもらえないからと言い訳してキスする。

「んっ、時間…」

続くキスの合間に、出社時間がないと伝えるのに

「ん、大丈夫。まだ五分くらいあるから、黙って」

朝からの濃密なキスの後

「続きは帰ってきてからな」

私が物足りなさそうにしているかのように、唇を指先で撫でたその指を舐める姿に、今日も体の奥底が反応するのだ。

[END]
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