大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
結局、どうしてこうなったのかと自問自答しても答えはみつからない。
とりあえず、彼女も起こさないととシャワーから出て彼女が寝ている寝室に入って行けば、起きていて怒っている。
こっちは、彼女に責められる、もしくは忘れてくれと言われると考えていた。
なのに、何事もなかったようにシャワーを浴びてドレスを着てた彼女を家まで送って来た。
帰り際の呆気ないこと。
モヤとしながら、帰路について寝室に入って行けば、綺麗にベッドメイキングされていた。
いつのまに…
まるで、最初から何もなかったかのようだ。
この腕には、彼女の温もり肌の滑らかさ、耳に残る甘い吐息と切なく鳴く声、脳裏には艶めいた女の表情の彼女が残っているというのに!
ベッドに寝そべれば、彼女の匂いがほのかに残っている。
菜生…
お前は、後悔しているのか?
1人の女を思い浮かべるなんて初めて、俺は、訳の分からない感情に振り回される夜になった。
こうして、部屋のソファで1人で酒を飲んでいる。
肘掛に肘をつくと、痛みが走る。廊下を絡み合いながらぶつけた時にできた痣だった。
この痛みも、菜生を抱いた記憶…
飲んでも酔えずに彼女を思い出す。
彼女が消えてくれないのはどうしてだろう?