大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
奏のキスや、体を弄る手のひら、そして熱い吐息、肌の熱…トドメに大量のキスマーク、一回限りの関係だったのに、これから悩まされるなんて思ってもいなかった。
第一の悩みが翌日の朝に起こる。
体が筋肉痛で歩くのも辛い。
それでも、社会人として責任感があるわけで、痛みに耐えて会社に向かって歩いていると、背後から肩を叩かれる。
「おはよう、菜生」
「おはようございます…優希さん、早いですね」
私が勤める遊具メーカー羽山で優希さんは、デザイン部門にいる。数少ない女性社員ということで仲良くなった。
「昨日、甥っ子と公園で遊んでいていいアイデア
が浮かんだのよね。忘れないうちに図にしてまとめようと思って早く来たんだけど、菜生、体調悪い?」
「なんともないですけど(本当は体中痛い)」
「…そう⁈なんだか、ぎこちない歩き方してる気がして、靴づれでもしてる?」
「き、気のせいですよ」
慌てて取り繕ってみるが、優希さんの目は疑っている気がした。
「なんともないならいいんだけど…そうそう、友達の結婚式どうだった?私も結婚するならチャペルでしたいのよね」
「優希さん、彼氏いました?」
「彼氏がいなくても、夢見てもいいでしょう」