大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「あっ、健さん?違うよ。昔の彼氏を思い出してた」
「…それはそれでなんだかムカツク」
「なんで奏がムカツクのよ」
「わかんねーよ。…カギ貸せ」
「ハァッ?」
「部屋のカギ出せって」
意味がわからないまま、とりあえずカバンの中から出して見せると、奪われてアパートの階段をなぜか2人で上がっている。
「返してよ」
「うるさい、近所迷惑だから黙れ」
そんな大きな声出してないし、奏の声の方が大きいくせに…
つい、文句を並べながらも黙ってしまう。
部屋を開けた奏が、入れと顎で指図する。
もう、なんなの?
意味もわからず玄関に入ってふりかえると、ドアを閉めて奏もそこにいた。
「ちょ、ちょっと入らないでよ」
追い出そうと奏の胸を押した手を両手で拘束されビクともしない。
「離してよ」
「…抱かせろ」
はあっ?
抗議する前に、唇は奏に塞がれていた。
唇を食んで、巧みに操る舌が口内を味わいだす。
うそでしょー
奏は、私の体をどう扱えばいいかもう知っている。
私より厚い奏の舌が、舌を捉えていく。
荒々しく絡める舌が離れると唇も離れて、唇をくすぐるように奏の唇がなぞり、焦らすのだ。