大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「あっ、健さん?違うよ。昔の彼氏を思い出してた」

「…それはそれでなんだかムカツク」

「なんで奏がムカツクのよ」

「わかんねーよ。…カギ貸せ」

「ハァッ?」

「部屋のカギ出せって」

意味がわからないまま、とりあえずカバンの中から出して見せると、奪われてアパートの階段をなぜか2人で上がっている。

「返してよ」

「うるさい、近所迷惑だから黙れ」

そんな大きな声出してないし、奏の声の方が大きいくせに…

つい、文句を並べながらも黙ってしまう。

部屋を開けた奏が、入れと顎で指図する。

もう、なんなの?

意味もわからず玄関に入ってふりかえると、ドアを閉めて奏もそこにいた。

「ちょ、ちょっと入らないでよ」

追い出そうと奏の胸を押した手を両手で拘束されビクともしない。

「離してよ」

「…抱かせろ」

はあっ?

抗議する前に、唇は奏に塞がれていた。

唇を食んで、巧みに操る舌が口内を味わいだす。

うそでしょー

奏は、私の体をどう扱えばいいかもう知っている。

私より厚い奏の舌が、舌を捉えていく。

荒々しく絡める舌が離れると唇も離れて、唇をくすぐるように奏の唇がなぞり、焦らすのだ。
< 41 / 211 >

この作品をシェア

pagetop