大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
甘い声で
「ななせ、まだ、慰めてほしいんだろう!」
健さんを思い出すけど、この数日は奏の事でいっぱいだったなんて言えない。
思い出すのは、奏の艶めかしく動く指先、肌の熱
、キスマークをつけられた時の甘い痛み、優しく抱きしめる腕の中。
男の人に抱かれて深い眠りにつくなんてできると思っていなかった。
意外と心地よかったんだよね。
あの日だけのはずだったのに、こんなキスされたら思い出してしまった。
「また、慰めてくれる?」
「そう言ってる。つべこべ言わず抱かれろ」
セフレでもいいか…なんて、この時思ってしまう。
それだけ、奏の温もりは魅力的だった。
そして、どちらかともなく唇を重ねて靴を脱いで向かう先は、数歩歩いた先のベッドの上。
この前のように、月明かりがベッドを照らす訳じゃないけど、目が慣れてきたのと、外の街灯の明かりで部屋は薄暗く感じる。
「やっぱ、さっきも思ったけど、この匂い好き」
耳元に鼻先を近づけてクンクン匂いを嗅ぎながら、うなじを唇が這う。
そして、うなじをきつく吸う奏。
「…んっ、…痛いってば。何つけてるの!痕になる」
「虫よけ」
ハァッ、なに言ってるの?
「彼氏でもないのに、つけないでよ」