大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
とにかく、お腹がすいたし、喉も渇いてる。
でも、もう少しだけこのまま…なんて思っていたら、どこかでバイブの音が響きだしていた。
「もう…」
私を抱きしめる奏を起こさないように、その腕を外して、気怠い体で音のする物を探した。
床に放り投げられている奏の上着のポケットからする。
…奏のか
「…奏、スマホ鳴ってる」
「んっ…とって」
寝ぼけて起きない奏の代わりに、スマホをとってあげた。
着信画面には、『ゆい』
なんだか、画面を見た瞬間、ムっときて、枕元にポイとほうりなげた。
「…奏、ほら出たら!」
手に届かないスマホを音を頼りに探りあて、目をこすりながら画面を見ていた。
「誰…ゆい?…あぁ……」
そして、ちらっとこちらを伺う奏。
「私、シャワーしてくるから、ごゆっくり」
プイと顔を背け、クローゼットの中から部屋着と下着を取って浴室へ向かった。
鏡に映る自分の体には、上書きされたキスマークの痕が残されている。
近寄り髪を耳にかきあげてよく見ると、首すじにくっきり残る赤い痕。
何が虫よけよ…
彼女でもない女にキスマークなんてつけるな!
ただの鬼畜のくせに…
なんだか無性に腹が立ってくる。