大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

とにかく、お腹がすいたし、喉も渇いてる。

でも、もう少しだけこのまま…なんて思っていたら、どこかでバイブの音が響きだしていた。

「もう…」

私を抱きしめる奏を起こさないように、その腕を外して、気怠い体で音のする物を探した。

床に放り投げられている奏の上着のポケットからする。

…奏のか

「…奏、スマホ鳴ってる」

「んっ…とって」

寝ぼけて起きない奏の代わりに、スマホをとってあげた。

着信画面には、『ゆい』

なんだか、画面を見た瞬間、ムっときて、枕元にポイとほうりなげた。

「…奏、ほら出たら!」

手に届かないスマホを音を頼りに探りあて、目をこすりながら画面を見ていた。

「誰…ゆい?…あぁ……」

そして、ちらっとこちらを伺う奏。

「私、シャワーしてくるから、ごゆっくり」

プイと顔を背け、クローゼットの中から部屋着と下着を取って浴室へ向かった。

鏡に映る自分の体には、上書きされたキスマークの痕が残されている。

近寄り髪を耳にかきあげてよく見ると、首すじにくっきり残る赤い痕。

何が虫よけよ…

彼女でもない女にキスマークなんてつけるな!

ただの鬼畜のくせに…

なんだか無性に腹が立ってくる。
< 45 / 211 >

この作品をシェア

pagetop