大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
首から上が真っ赤になる菜生を見て、この4日間の俺のモヤモヤが一気に飛んだ。

それを一気に引き戻すのも菜生だった。

「臣さんって、かっこいいですね」

「突然、何言ってるんだ。酔っ払い」

今度は、臣に慰めてもらおうと企んでいるのか⁈
腹が立ってくる。

何が彼女います?だ。

何が…残念ながら、募集中だ。年中、女なんてかけた事なんてないくせに!

何が、きゃあで、どうしましょうだ。

かわいいよね、菜生ちゃんって!

はあっ、臣のセリフに奴を睨んでいた。

「…なぁ、奏もそう思うよな。俺はかわいいより美人な優希ちゃんがタイプだけどね」

クソ…菜生もかわいいと言われてまんざらでもなさそうで、ムカつく。

「かわいい?こいつが?」

菜生の肩を抱き、見つめているのに目も合わせてくれない。

他の女なら喜ぶのに…

「んー、黙ってればかわいいかもな」

素直に言えないのは、こいつのせいだ。

臣は、菜生がタイプだと言って、隣の彼女の気をひく為に、引っ掻き回す。

内心、穏やかでいられないのに、隣の女は、そんな事なんて知らないで、楽しそうに2人の口にイカゲソの唐揚げを突っ込んでいる。

「あっ、店員さん、ビール四つお願いします」

側を通りかかった店員を呼び止め、空のジョッキを渡す。
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