大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
おい、まだ飲むのか⁈
少し、テンションおかしくなってきてるぞ。

「一つ、烏龍茶に変えて」

自分に与えられた烏龍茶に不満顔の菜生の機嫌をとる為に

「ほら、酒以外ならお前の好きな物頼んでいいから」

と、メニューを渡した。

女の機嫌なんて、とった事なんてないって知っている臣は、楽しそうにニヤッと笑う。

弱みを握られたようで面白くないけど、隣でパフェを食べている菜生が美味しそうにしているから、まぁ、いいかと思っていた。

会計は、臣と俺の奢りで割り勘。

突然、素直に、ありがとう、ご馳走さまと言われて、照れた俺は素直になれない。

不意打ち過ぎて、菜生をまともに見れなかった。

臣は、優希ちゃんと一緒に帰り、菜生はバイバイと言って俺をその場に置いて歩いて行く。

このまま、別れて寂しいと思うのは俺だけらしい。

まだ、側にいたくて…送って行くと口実をつけているのに

「反対方向だし、いいよ。気持ちだけもらっておく」

なんて言いやがるから、嫌がってでも、家まで一緒に歩いて行くと決めた。

駅地下の階段を踏み外しそうになる菜生の体を、咄嗟に支えた。

俺が側にいなかったら、足をひねっていただろう。
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