大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
酔ってるせいか、足元に気が回らないらしい菜生が心配でつい、手を差し出していた。

「なに?」

「転ばないように、手を繋いでやるって言ってるんだけど」

「いや、いい」

全力で否定する菜生にカチンときて、無理やり手を繋いで歩いた。

「…一人で歩けるんだけど」

「ふらついてる」

「そんなに飲んでないよ」

「いいから、黙って歩け」

なんで、こんなに可愛くない事ばかり言うんだ?

他の女に感じない苛立ちに、イライラしているのに、俺と繋いでいる手を見て何か思っているふうだった。

俺といるのにボーとしていて、俺が言わなきゃ家に着いた事も気がつかないぐらい、誰を思っていた?

思考が現実に戻ってあっさりと手を離そうするから、面白くない。

ボーとしていた理由を聞けば、健でもない昔の男。

手を繋いでいたのは俺なのに、菜生には俺は男として見てもらえてないらしく、昔の男以下らしい。

どうしたら、菜生の頭の中は俺だけになるんだ?

一度抱いたぐらいじゃ、ダメなのか?

菜生から部屋の鍵を奪い開けたら彼女を部屋の中に押し込んで後に続いた俺を拒む菜生。

「ちょ、ちょっと入らないでよ」

なんでだよ…
< 54 / 211 >

この作品をシェア

pagetop