大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
追い出そうとする手を両手で拘束したら、戸惑っていた。
「離してよ」
「…抱かせろ」
つい出た本音に、菜生のためらいがみえた。
「ななせ、まだ、慰めてほしいんだろう!」
そして、何かを言う前に唇を塞ぎ、キスしているのは昔の男でも、健でもないこの俺だとわかってほしくて、丹念にキスを深め記憶に残るキスをする。
「また、慰めてくれる?」
まだ、健を忘れられないでいるなら、それでも今はいい。
「そう言ってる。つべこべ言わず抱かれろ」
俺に抱かれている時だけでも、俺でいっぱいになってくれ…
菜生から香る香りは、俺を狂わせる。
吸いつきたくなる白い肌に、甘い香りは、今まで他の誰にもつけた事のないマーキングを誘う。
「…んっ、…痛いってば。何つけてるの!痕になる」
「虫よけ」
「彼氏でもないのに、つけないでよ」
「キスマークつけた女なんて、誰も抱かないからな。これでいいんだよ」
プリプリと怒る菜生だが、これでしばらくは他の男に抱かれようと思わないはずだ。
「誰にも抱かれないし」
嘘つけ…俺のいない場所で酔っていたら、他の男に慰めてとお願いするかもしれないのに!
「俺以外な」
誰にも抱かせたくない。
「今はね」
そう言ってろ…