大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
一度会いたいと何度もしつこいからだ。
そう望むなら一度会って終わりにしようと後で会う約束をして、なんだか疲れていた。
無性に菜生を抱きしめたくなり近寄ると真っ赤になっている。
「ちょっと、下隠しなさいよ」
このまま抱きしめたいが、怒るだろうとわかっていたから浴室へ向かったのに、いい匂いに引き戻される。
「俺の分もある?」
「…あるよ」
俺の分も用意していてくれてた事が嬉しくて、ウキウキと浮かれていたらしい俺は、チュッと菜生の頬にキスしていた。
まるで恋人にするような錯覚に、自分で戸惑い逃げるように浴室へ駆け込んで、頭を冷やして出てきたつもりだったが、まだ浮かれていた。
菜生が作ってくれたホットサンドを口の中一杯にして、「うまい」と言ったつもりが上手く伝わらなくて、「美味い」でしょ…とツッコミが入る。
なんだか、このほんわかした空気が居心地がいい。
このまま一緒に過ごせたらと思うのに、約束の時間がせまってくる。
まだ居たらとか…
ゆっくりしてけばとか…期待していた言葉と別の言葉が返ってきた。
「食べたなら帰って…私、いろいろすることあるし忙しいの」
つれない態度に、俺はかなり落ち込んでいるのはなんでだろう?
彼女にとって俺はなんなんだろうか?
それから、モヤモヤと過ごす日々が続いた。