大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
掠れた声で答えた彼女は、ちょこんと座って、スマホの画面を確認し、ほのかに赤くなる。
「風邪ですか?」
「…うん、そうなのかな⁈」
「季節の変わり目のせいですかね。パスタでいいですか?」
「……あ、うん。手伝うね」
昨日の残りのベーコンとほうれん草を使って、クリームパスタにする。
食べている間、たわいもない会話で過ぎていく中、優希さんが話すタイミングを待っていた。
チラチラとこちらを見て、伺っているのがわかる。
言いにくいなら、こちらからきっかけを作ってあげるしかないが、まどろっこしいのは嫌いだ。
「優希さん…臣さんとどうなったんです?」
ビクッと肩が揺れ真っ赤になっていく顔に、ニヤッとなる。
こんな可愛い優希さん初めてだ。
「…聞きますよ」
はぁーと大きく息を吐いて、勢いをつける優希さん。
「金曜、あの後危ないからって家まで送ってもらったの。それで、そのまま『おやすみ』って言われて、引き止めるのも変でしょ…送ってもらったお礼を言っておやすみなさいって帰る後ろ姿を見送ってたの。そうしたら、戻ってきて照れ臭そうに『忘れ物した』って言うのよ。なんだろうって思うでしょう?なんだったと思う?」
「キスですか?」