大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

もちろん、いざとなれば後方からの援護射撃ぐらいはしてあげるつもりだ。

「ところで菜生」

急に優希さんの顔つきが変わった。

「それなに?」

なにってなんだ?

ニヤッとなる優希さんに、嫌な予感しかしない。

「首すじについてる痕、金曜日はなかったよね」

慌てて隠しても誤魔化しようがなかった。

「奏さんにつけられた⁈」

「そうですよ…なんか虫よけにって言われましたけどね。付き合ってもないのに虫よけってなんなんですかね?」

今度は、こちらが相談する番だ。

「そんなの、そのままの意味以外あるわけないでしょ」

「まさか、奏が私の事好きなんですか?」

「そんなの本人に聞かないとわからないわよ。好きかどうかは別として、菜生に自分以外の男を近寄らせたくないって事は確かね。金曜の夜も、臣さんが菜生の事気に入ったって言った瞬間の、怖い顔。臣さんも気がついたからそれ以上言わなかったでしょう⁈」

「優希さんの気のせいじゃないですか!あいつ、私とこの部屋にいて、女の人から電話があったら出て行ったし…本当、サイテーな男ですよ」

「そのサイテー男と二回も寝たのはどこの誰?」

「私ですけど…別に私は、最初、奏じゃなくても失恋を慰めてくれる人なら誰でも良かったんです。2回目は、成り行きですけど」
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