大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「今、気がついたのか?」

「まぁね」

「そりゃそうか!お前、健しか見てなかったもんな」

図星を突かれ、奏を睨んだ。

睨んでいるのに、奏はなんともないと鼻で笑っている。

「少しは、マシになったか⁉︎周りの男なんて眼中になかったもんな。これからは、ほかの男に目が行くようになるのか?」

奏の1人ごとのような自問に

「新しい恋なんて当分いらない。とりあえず、忘れさせてくれる人がいい」

「なんだよ、それ?セフレか?」

「私なんかでいいって言ってくれるなら、いいかも!」

「ハァッ、お前やっぱ馬鹿だろ。セフレなんて男の体のいい性欲処理だぞ」

「いいじゃん。私も失恋を忘れるのに利用するんだから、お互いさまよ」

はあっーと大きなため息が聞こえた。

「智奈美に頼まれたからってかまわないでいいよ。私は、そこら辺にいる人誘ってみるから、あんたも今日の相手探したら?チラチラあんたを見ている女の子いるわよ」

そっと肩越しに後ろに視線を向けた。

「わかった。ほかの男にお前を任せるなんてできないわ」

えっ?

「ななせ…」

「なに?」

繋がれていた手の指が艶めかしく絡んだ。

「俺が慰めてやろうか?」
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