大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
久しぶりの菜生とのキスを邪魔する人影に、名残惜しいまま唇を離した。
そこにはニヤッと笑う臣がいて、揶揄いに菜生の顔は真っ赤になって視線を彷徨わせ、俺を睨んで恥ずかしがっている。
かわいい…
もう、自覚してしまうと何もかもが可愛くて仕方ない。
恋する男達をあんなにバカにしていたのに、今はその気持ちが理解できる。
今日はもう、キスだけで終われない堪え性のない俺は、菜生の耳元で囁いた。
「続きは、また後で」
俺と臣は、もう意味のない時間を過ごすつもりはなかった。
部屋に戻って、そろそろお開きにしようと残りのメンバーに伝えれば、女性2人は遠回しにまだ時間が早いから、次の店に行こうと誘って来た。
臣も俺も彼女らと一緒に居たい訳じゃない。
誰にも邪魔されず一緒に居たいのは、ただひとり…
今、部屋に戻ってきた愛する女とだ。
用事ができたからと伝えても引き下がらない彼女らを無視した臣は、優希ちゃんはどうするかと尋ねた。
もちろん帰ると言うと思っていたはず…
先に、菜生がまだ飲み足りないと言い出した事で、優希ちゃんもうなずいていた。
それには、珍しく臣は険しい表情を見せ不機嫌を隠さない。
それは、俺もで…、2人きりになりたいのは自分だけなのだと心が折れそうだった。