大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「慰めてよ」

素面の私だったら、絶対頷かなかった。

言い訳かもしれないけど酔っていた…

そう酔っていたからとしか言いようがない。

「わかっているのか?」

「わかってるって…」

全然わかっていなかった。

「後悔するなよ」

「しないわよ」

椅子から降りた奏は、手を繋いだまま反対の手に私の荷物と自分の荷物を持って、今だ椅子に座ったままの私を見た。

「行くぞ」

「えっ、どこに?」

手を引かれた勢いで、椅子から降りてついて行くが、どこに行くのかわかっていない。

「俺の家と近くのラブホ、どっちがいい?彼女じゃないんだからホテルじゃなくていいよな」

「サイテー」

「その方が、セフレって感じだろう」

意地悪くニカっと笑う顔がムカつく。

「セフレじゃないわよ。今日だけなんだから!」

「はいはい、わかった。そう思ってろ…お前、その格好でラブホってないわな…やっぱ俺の家な」

カクテルドレスを着る私を見て、ラブホという選択は排除されたらしい。

「えっ、いいよ。そこら辺のラブホで」

「朝、帰る時の事考えろ。俺の家ならその格好でも家まで車で送って行ってやれる。だからタクシー探せ」
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