大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

近くてよかったとホッとしていたら、追い討ちのメールが来た。

『今からホテル行くらしいですよ』

はあっ…そんな事させるかよ。

俺は今いる場所から猛ダッシュで走った。

途中、息が切れそうで苦しくて、何度も立ち止まろうと考えたが、菜生を捕まえ損ねたら後悔どころか嫉妬で狂いそうで、スピードが落ちても必死になって走って、石黒を視界にとらえた。

見つけた!

石黒の腕に菜生が寄り添っている姿に、ヤバイと焦ってなんとか追いついた。

「何が‥いいんだ?…」

苦しくて、膝に手をついて呼吸を整えながら、わざとらしい石黒とのどうでもいい会話に、焦れていた。

スマホを見せ、電源が切れていたとわざとらしいアピールに

「嘘つけ…お前ほど信用ない男と菜生を一緒にしておけるか!」

「奏が言うか!」

ベシッと俺の頭を叩いた菜生は、ご機嫌だった。

「チッ…酔っ払いめ、帰るぞ」

「やだ…石黒さんと帰る」

石黒なんかと帰らせるか!

「うるさい…バカ女」

「毎回バカって言うな…」

こっちの気も知らないで酔っていて、始末に負えない。

「いいから来い」

石黒から菜生を引き離したら、素の石黒が顔を出し、それが菜生の気分を害したらしい。
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