大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「もちろんだ」
奏に、今までにない甘さを感じるのはどうして?
チュッ…チュッとリップ音鳴らしながら、奏の手は私の足からヒールを脱がしていく。
ヒールを脱がされただけなのに身体の奥底が期待で熱くなり、今までに感じなかった奏の甘さに戸惑って床に手とお尻を着けたまま後退する私を、苦笑しながら膝をついた体を倒し覆うように四つん這いになって追いかけてくる。
「逃げるなよ」
「だって…」
間抜けな格好だと思うのに、ドキドキが止まらないのだ。
キスをしながらの追いかけっこ…
背に、ベッド横のチェストが当たると、もう逃げ道はなかった。
レースのカーテンから外の明かりが奏を照らす。
上唇を舌舐めずりをした奏が、妖艶に微笑み緩めていたネクタイを抜いてポイと放り投げ、着ていた上着もポイとその場に脱ぎ捨て、不意にキスしてきたと思うと、私を見つめながらシャツのボタンを全部外し優しく頬を撫でていく。
「脱がないの?それとも俺に脱がされたいのか?」
奏に見惚れて動かない私を揶揄っているのだ。
クスッと笑った奏…
「俺に脱がさせて…」
いつも偉そうな口調のくせに、こんな時に甘えた声で言うなんて、ずるい。
彼氏でもないのに、きゅんきゅんしてときめいてしまった。