大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
「色々あるけど、お前といる時間の方が大事。なぁ、たまには仕事帰りに待ち合わせして出かけようぜ」
私をぎゅっと抱きしめる腕に力が入る。
「休みの日、一緒に出かけてるけど」
「それは、ただの買い物だろ…飯でも食いに行こうって言ってるのに、わかれよ」
なんだかデートに誘われているみたいで、嬉しいような気持ちを隠して、目も合わさずに呟いた。
「別にいいけど」
ツンケンした態度だっただろうか?
「マジ…いつにする?」
指を絡めてくる奏は、スマホのアドレス帳の画面を開いて予定を確認している。
嬉しそうに、あーでもない、こーでもないと独り言を言い予定を立てている姿に、こちらも嬉しくなってきて、奏の首に抱きついた。
「……誘ってる?」
「違うから…バカ」
照れをバカって言って誤魔化すようになったのはいつからだろう?
「違うって言われてもな…俺、スイッチ入った。抱いていい?」
本当に奏は変わった。
「嫌って言っても抱くんでしょ!」
「その気にさせてから」
ニコニコと笑い、キスを仕掛けてくる。
前は俺様で自分勝手にキスしてきて命令口調だった人だろうか⁈
「…ご飯は?」
キスの合間に、わかりきった事をたずねてしまうのは、この関係が曖昧なままだからだ。