恋の始まりの物語

金曜日の出来事~side 美玲

事の起こりは、先週の金曜日。

私、湯川、まりあ、透の同期4人で、『リオン』で飲んでいた。
私たちは、入社7年目の28~29歳。私とまりあはもうお局様に近い。
何で男だと中堅として若く見られるんだ。不条理だ。
…それはともかく、今残っている同期はこの4人だけなので、それなりに仲良しだ。

仕事の愚痴はいつものこと。
今回は透の失敗…というか、失敗を先輩に擦り付けられた話がメイン。
身振り手振りを交えて話す透、いつもながら面白い!
それを優しく見守るまりあ。
この二人、一昨年から付き合っている。

そして…まりあのことが好きだった湯川は、告白もせずに振られたのだ。

私だけが、湯川のその想いに気がついていた。入社して二年目くらいだろうか。
そのことを何かの機会に指摘して以来、二人で飲みに行くと、湯川がいかにまりあのことが好きかを聞かされた。
付き合ってもないのに、ノロケかよ、と思うほど。

まりあが透と付き合い出した後も、しばらく女々しく語っていたけど、最近はそれもめっきりなくなって、仕事の話ばかりだ。

他部所の話は参考になる。
自分がどう動くべきか、考えたりできるからだ。
幸い、湯川は営業、透は企画、まりあは広報とバラバラだった。
彼らは、友達であると同時に、貴重な情報源でもあった。

話が一区切りついたところで、透がビールのジョッキを置いた。

「あのさ。」
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