恋の始まりの物語
「お…おまっ、あんな凄い人捕まえてたのか!」

叫んだのは、透だ。

工藤さんは、イケメンとは言えないけど、普通の顔立ちで、身長も173㎝だったかな。
でも抜群に仕事のできる人だった。

強引に迫られ、押しきられる形で付き合ったけど、とてもスマートなデートや甘い言葉に、どんどん惹かれていった。

──でも、実は女にだらしない人で。

別れたタイミングの話だけしたけど、原因は、浮気だった。

ちなみに、大学の時の彼氏も。
あっちは浮気って言うか、『他に好きな人ができた』と言われた。

重なってる期間があったから、浮気でいいんだよね。
終わり近くは、私が浮気相手だったかも。

最初、あっちの方が強引に口説いてきたのにね。

お二人のお陰で、男の心は変わるということを学びました。
アリガタヤ、アリガタヤ。
心の中で、手を合わせる。

ふと目があった湯川は、少し悲しい顔をしていた。
営業だもん。他社とはいえ、関わりがある会社の人の噂は聞いてるよね。
私はさりげなく唇に人差し指をあてた。
湯川にだけ見えるように。

幸せな二人には、聞かせたくない話だから。
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