恋の始まりの物語
ひとしきり質問に答えてお酒を飲んで、「何だか俺たちの結婚話が霞んでしまった…」という透の呟きとともに、同期飲みはお開きになった。

駅へ向かって仲良くくっついて歩く二人を、湯川と見送る。

家が近所の私たちは、相乗りタクシーだ。
いつも、私を先に送ってくれる。
だから、湯川が先に自分の家の住所を告げたとき、ちょっとびっくりした。

少し不審そうに見つめてしまったのだろう、湯川が口を開いた。

「山本、今日付き合え」

…ああ!そういえば湯川は今日、トドメを刺されたんだった。
私は二つ返事で了承する。
お互いの家飲みは、もう何度もしている。

「酒あんの?」
「ビールとチューハイ、缶の。
んー、5本3本てとこか」

「じゃ、一回帰ってそっち行くよ、お風呂入りたいし、酒も補充しよ。コンビニ寄ってく」
「そうか、じゃ、迎えいくわ」

これも家飲みのデフォルトだ。
一旦帰って飲みだと、湯川は必ず迎えに来る。
何度断っても聞いてくれないので、もう諦めている。

よろしくと頼んで、先に降ろしてもらった。
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