恋の始まりの物語

慣れ親しんだ場所~side 美玲

湯川の部屋は、1LDK。
うちより断然広い。
だから、家飲みは圧倒的に湯川の部屋が多い。

慣れたもんだ。このリビングも台所も。
湯川の使う男物の香水が、仄かに香る。

部屋の香りが男っぽいのが最初落ち着かなかったことを思い出して、ふ、と笑った。

「何?」

「いやぁ、この部屋も慣れたなーと思って。
いつくらいから来てたっけ?」

「あー、いつだっけか。

ああ、まりあと透が付き合うとかどうとか言ってた頃じゃね?」

じゃ、一昨年くらいか。
それまでは、外で飲んでたもんな。
まりあに誤解させたら困ると思って、誘われても私が頑なに拒否してたんだ。

段々若くなくなって、外飲みが面倒になってきた頃、二人が付き合い始めた。

じゃあもういいかって思って、湯川の誘いに乗るようになったんだ。
< 18 / 43 >

この作品をシェア

pagetop