恋の始まりの物語

私の後ろにいた男。

同期の、湯川 雅司。
イケメンと名高い。

高身長で、優しげな甘いマスク。色素の薄いふわふわの柔らかそうな髪は、緩くウェーブがかかっている。

走って来たらしく、はあはあと息をついて、エレベーターを待つ私の隣に並ぶ。

私は彼を一瞥すると、降りてくるエレベーターの階数表示を見上げた。

「おはよ、どしたの急いで」

なるべく、いつものように話す。
でも、ここで会うことを予測していなかったから、内心はひどく動揺していた。

「どしたのってお前…俺昨日も一昨日もずっと連絡してんだけど、お前無視してんじゃん」

「そうだっけ？携帯見てなかった、ごめん」

嘘だ。

この土日、電話やメールの着信音が響く度、私はビクビクしていた。