恋の始まりの物語
「おお、いい心掛けじゃない。

無理しない程度に、ゆっくり忘れていけばいいよ。
湯川なら大丈夫。いい彼女ができるよ。
私も、出来る限りの協力はするから。」

よしよしと頭を撫でてやる。

気持ちよさそうに目を閉じる湯川は、何だか大型犬のようだ。尻尾が見えそう。

「ホントにそう思う?」

「思う思う。」

「じゃ、次はお前。」

「ああ、そうなんだ。お前かあ…。

……………………。
………………。

ん?え、何?お前?お前って誰よ?!」

「お前はお前だろ、山本美玲」

「美玲って言うなって言ってんの!
似合わない名前で呼ばれると、寒いわ!」

「そこかよ!!」

待って待って待って!
酔いがいっぺんに覚めた。

「いや、言っていい冗談と悪い冗談ってもんがあるよ!

私たち、仲のいい友達だよね?!
そういう対象じゃないよねお互い!
何血迷ってんの?!」

慌てている私は捲し立てる。

「血迷ってなんかない。
だいぶ前から、お前って決めてた」

対照的に、静かに諭すような声で、湯川は話す。
眸を見ると、本気なのがわかった。

私は、愕然とした。



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