恋の始まりの物語
二階、三階と止まった後、チン、と音がして、私の部署がある五階に着いた。
ゆるゆるとドアが開く。

伏せた視線を前に向け、エレベーターから踏み出す。

──瞬間、二の腕を大きな手に捕まれ、引っ張られた。

何?!

引っ張った人はそのまま私の腕を引いて、近くの会議室に押し込む。

「──何すんの湯川!」

身長165㎝、体重62キロ。
スポーツもしててごつい私を、いとも簡単に動かす。
細っこいのに、やはり『男』だ。

でも、他人に好きなようにされるのは嫌いだ。
私は『可愛い女の子』ではないから、男とは張り合ってしまうし、負けたくない。
それをよくわかってる湯川なのに、何なの?!
睨もうとして、顔をあげた。

──そこには、もっと怖い顔をした、湯川。

「お前…逃げんな。」
「はあ?!この私が、何から逃げんのよ。
金曜のことは忘れたから、あんたも忘れて。
それで良くない?」

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