私の好きな人



「彩月ー何してんの?ほんとビックリ!」

「…こ、小林くんこそ…1人なの…?」

「まさか。1人で来ないでしょ普通」

「…ですよね」



私は繋いだ手を後ろに隠すようずらした

なんか…見られたら恥ずかしい



でも


良平の力によってそれを阻止された



案の定、小林くんからはハッキリ見えてしまう



小林くん……めちゃくちゃ見てる



「あ、もしかしてデート中?」

「デ……そんなんじゃっ」

「ふーん、でもお邪魔みたいだね」

「やめてってば…もぉ」



なんなんだ、小林くんって人をからかうのが趣味なのかな


なんて悪趣味だ



私は下を向いて困惑中…


まさか…この間にバチバチと無言の視線合戦が勃発してるとは思ってもみない



ただ、ずっと良平の力が緩むことは無かった


力強く握られた手は、本当に感覚を無くしそう…



「どうも、藤くん」

「どうも」

「今日は幼なじみと仲良くお出掛けですか」

「……」

「あ、幼なじみだから家族も一緒とか?」

「2人だけど」

「へぇ、そっか」

「彩月、行くぞ」

「え?…あ、うん」



歩きだした良平に強引に引っ張られる


小林くんは相変わらずの笑顔でこっちを見て手を振る


………あれ、たしか小林くん


図書館で私が持ってたチケット見てたよね


良平に渡す時も見てたし


もしかして

……………………知っててわざと?


でも……なんで



「良平っ…手いたっ…い」

「あ…ごめっ」


パッと手は離れた



どこか落ち着きのない良平


………不思議な感じ



「良平?」

「……」


応答がない



今私たちは水槽トンネルになってるエスカレーターで上昇中


ふと上を見ると海藻と魚が綺麗に揺れてて、すごく幻想的


「ね、ねぇ良平、上見て!綺麗だよ」

「………」


応答はない



……やっぱり怒ってる…?


小林くんと会ってから良平の様子がおかしいよ



「良平?」



長ーいエスカレーターはまだ着かない



前に立つ良平が、振り向いた


1つ上の段に立つ良平はさらに大きく感じた



「なぁ彩月」

「はい」

「あいつとどういう関係?」

「……小林くん?」



あいつとは…


きっと小林くんのことだろう


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