私の好きな人
『うわぁ…今日も混んでるねぇ』
『だな…』
駅に着くなり、通勤通学のラッシュに飲み込まれる2人
電車を待つ間
混雑する人混みの中
高校生になってからずっとだけど…
密着する良平との距離には相変わらず慣れないな
とてもじゃないけど
平常心ではいられない…
そんな毎日です。
ドンッ…!
『きゃ…っ』
そんなしょうもないことを考えていたら、通行人に突然体当たりをくらい、私はよろめいた
『ったぁ…なんなのよ…もぅ』
『ばぁか。ぼけっとしてるからだ』
『ひどいな…』
『ここ、入ってな』
そう言って良平は一歩下がり、私のスペースを作ってくれた
『あ…りがとう///』
良平の前のスペースに立つ
良平の顔は、私の頭のすぐ上
近いよ…
けど嬉しい
やっぱり良平は優しいんだ
ばかとか言いながら、こうやって私を思ってくれる
まぁ一緒にいる連れが体当たりくらってよろめいてるのが恥ずかしいからだとは思うけど…
それでも
この一つの瞬間がいつも宝物になる
『良平?』
『ん?』
おっつ…
声が近い!
『いや…な、なんでもない』
『…は?なんだそれ』
あぁ…心臓がうるさい
どんどんどんどん
良平を好きになっていく
『彩月』
『へ?なに?』
そんなイケメンボイスで名前呼ばれたら、誰だって好きになっちゃうから!
…なんて思いながらも慌てて振り返り良平を見る
『…前!』
『前?』
『早く進め!乗り遅れるぞ』
『え?あっ』
気付いたら電車は到着し、前の人は乗車していた
『ったく…ぼけっとすんなって』
そう言いながら良平は私の頭を鷲掴みにして一緒に電車に乗り込む
言葉は冷たいけど
声と顔は優しい
電車の中は満員だけど
壁際でちゃっかり良平に守られてる私
これは、たまたま…?
たまたまに決まってる
『やべぇな…この混み用。そっち大丈夫?』
『うん、大丈夫だよ。ありがとう』
はぁぁ…
どんどんハマってく
好きだなぁ