私の好きな人
「えっと…どういう関係って特になにもないよ…」
「"アイツ"で小林って分かるんだ」
「え…」
「……今、彩月は」
「……」
「…誰のこと思い出してる…?」
良平はまた前を向いてしまった
誰のことって…
「…ごめん、何でもない忘れて」
そう言うと良平はエスカレーターを一気に歩いて登っていった
「え…待って」
私の声は届かない
良平は待つことなく先に進める足を早めた
エスカレーターを登った先は外へと繋がっていて、その先はイルカショーの会場だった
そして気付いたら良平の姿は見えなくなっていた
「良平…」
なにが…どうしたの
今日の良平はやっぱり変だ
"あいつとどういう関係?"
なんであんなこと聞くの?
まるで………
まるで……
「お客様へご案内です。次のイルカショーは15時からとなります。整理券をお求めのお客様は3階スカイデッキ管理室までお越しください。繰り返します……」
館内放送が流れる
3階スカイデッキって、ここ?
目の前には管理室
放送と共に周辺はまた人で混み始めた
……イルカショー
見たかったな
けど、良平いなくなっちゃったし
「なんで…怒ってたの…」
ベンチに座り、考えるのは良平のこと
特別な日にするつもりだったのに
こんなの……違うよ
なんでこうなったの
「………小林くんのせいだ…」
「呼んだ?」
「ぅうわぁっ!!」
真横から突然の声に私は奇声をあげた
「あれ、1人?幼なじみは?」
「な、なんでいるの?!」
さっきも思ったけど、偶然居合わせた感じじゃなさそう
「あー、えっとね、ここの水族館はうちの会社が支援してるから、たまーに暇な時来るの。無料だし俺」
「……あ…そうですか」
Kobayashi・JapanHoldingsの御曹司が
暇を持て余す金持ちの遊び……てか
もう笑うしかない
「ねぇ、私達がいること最初から知ってたでしょ」
「はは…バレてたか」
「なんで…」
よく分かんないけど、小林くんのせいで良平の様子がおかしくなっちゃったし、おかげではぐれて…
イルカショーも見れず、このまま今日が終わっちゃうかもしれないんだよ
「言ったじゃん。付き合ってって」
「いや…それは」
「まだ返事聞いてないし」
「急にそんなこと言われても困るよ…それに」
付き合ってって話、本気だったの?
返事言おうとしたけど、タイミングが合わなさ過ぎて言えなかったんだよ