私の好きな人
「りょう……へい?」
今…………
私はどうなってるの
急な展開に私の頭は付いていけない
「彩月」
「はい…」
うわ…
良平の声がダイレクトに耳に響く
私の心臓はとてつもない速さで波打って、痛みさえ感じる
けど私の耳に当たる良平の体からも、同じ速さの心臓の音が聞こえる…
「ごめん…彩月…」
耳に伝わる良平の鼓動はどんどん早くなっていく
「小林じゃなくて俺のこと考えて」
抱く腕が一層強くなった気がした
「俺を好きになって」
…………え…
………なに…?
「彩月、…好きだ」
何も言葉を発することが出来ない
全身の力が抜け
なにか込み上げてくる感情が
涙となって流れでた
ゆっくりと離される体
自然と視線が交わり、優しい表情の良平がいた
良平が私を……好き…?
夢のような感覚になる
良平が私を好き
良平が………
私に…そんな言葉…
こんな奇跡
二度とないだろうな
「彩月」
「あ…はい」
「急にごめん…でも本気だから」
「ううんっ…私もね良平っ」
ドン…ッ
突然、私と良平の間に割り込む影
私は一瞬で良平から離された
「藤くん奇遇だね。俺も同じ気持ちなんだ」
「…ちょ…っ小林くん!」
良平と私の間に割り込んできたのは言うまでもない…小林くんだ
……また邪魔する
今から私もやっと想いを伝えられるのに…
なんで……
小林くんは
なんでそんな意地悪するの…?
「おい」
良平は静かに口を開いた
「ん?」
「彩月から離れて」
「なんで」
「彩月と話がしたい」
「それは無理。俺が先に話してたんだもん」
「おい…」
「なんなら告白も俺が先だしね」
「……」
淡々と会話する二人
イルカショー会場の近くということもあり、周りは相変わらず人で混んでいる
けど、ここだけ時間が止まってるかのように空気が違った
「そうだ藤くん、これから彩月がどっちの告白を受けるのか勝負しない?」
「…は?」
「一週間、どれだけ彩月が好きか勝負しようぜ。最後に彩月が選んだ方が勝ち。どう?」
「お前な…」
「幼なじみが有利なんて思ってんじゃねーよ。男同士、正々堂々………あ、まさか怖いとかじゃ」
「っやる!」
「ふっ…じゃあ決定。お互い結果に文句なし」
私たち……
何を始めようと……?
私は二人の会話に入り込めるわけもなく
ただ
この状況を、理解できてない私はこれから始まる二人の勝負に
思ってもない結末を迎えることになる…