私の好きな人




休憩時間、教室に戻ると俺のクラスの前で賑わう女子たちの中に彩月を見つけた時は何かが俺の中で我慢できなかった


小林が転校してくる前まで、彩月が来ることなんてなかった

無意識に足早になり、俺の視界は1人に絞られる


俺の存在に気付いた女子の奇声と視線なんて関係ない


気付いたら彩月の顔を自分へと引き寄せていた



小林に向けられた視線を



強引に



俺の腕で見えなくした




でも


「今日も藤くんと転校生見に来たの!」

「みんなで目の保養にきました!」


彩月の友達が発した言葉に、俺は分かりやすく反応してしまい彩月を冷めた目で見る



彩月はきっと転校生の小林を見に来ている


俺の胸は押し潰されそうなくらい苦しかった


彩月は可愛い

学校中から一目置かれる美人で有名


小林だって、そんな彩月の存在を知ったら……


いや……考えたくもない


そんなの

冷静ではいられない




「良平ー!」



相変わらず俺の名前を満面の笑みで呼ぶ彩月は何一つ俺に対して態度を変えない



俺に対して、優しいと言う



俺は優しくなんかない



時々、彩月といると自分でも理解できないくらい、接し方が冷たくなる


それでも彩月は毎日俺に笑顔を向けるんだ



俺はきっと器の小さい男なんだろうな…



彩月から見て俺は、ただの幼なじみとしか思ってない


向けられる笑顔は、家族に向けられるのと一緒だ



チク…っ


まただ

ここ最近の俺の胸はずっと不調


俺らしくない…


こんなのは男らしくない


もう言ってしまえば少しは楽になるのかもしれない



ただ恋は人を臆病にする



恋は時に人を弱くする




ほんと


最近の俺は


………………俺らしくない





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