私の好きな人


「図書委員会」

「ふーん」


また彩月に対して素っ気ない返事を返すが


内心…かなり嬉しい



彩月は図書委員会に入ったらしい


何を隠そう俺は小さい時から本が好きで、毎日と言っていいほど図書室や図書館に通っている


本が好きなのは親の教育もあるが、何よりも図書館の、あの空間が好きで通っている


彩月は覚えているだろうか


小学2年の冬

彩月は転校したばかりで、寂しさからなのか図書室によく1人でいた


俺が入ると、読んでいた本を閉じて「藤くん」と向けられる彩月の笑顔


ご近所さんということなのか、彩月は俺に対しては慣れてくれてた


「図書室って、なにか良いよね」


何個もある机の中、彩月と俺は同じ机の向かいにいつも座ってた


「なんで?」

「うーん…集中できるというか、違う世界に入り込めるみたいな?」

「ふーん」

「藤くんは、なんで図書室によく来るの?」


…本が好きだから


って、すぐ言えばいいのに

なぜか言えなくて



「さぁ…」

「…あ、ごめんね…私、邪魔だよね」


素っ気ない言い方になってしまった俺に対して気を使う彩月


そうじゃない


ただ…


いつしか彩月といる、この空間が好きになっていた


そんなこと


言える訳がない



それから彩月は俺に気を使い、徐々に図書室に通わなくなった



だから、彩月が図書委員と聞いて


俺のテンションは密かに上がる



俺にとって、あの空間がまた特別なものになりそうだから




放課後、俺はいつもより軽い足取りで図書館に向かう


彩月がいるかもしれないと思うだけで、何倍も図書館が好きになる



時々思う…



幼馴染みじゃなかったら




とっくに告白してたはず





何かが邪魔するんだ



彩月に対しての何かが………





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