私の好きな人
「藤さん」
突然、小林から名前を呼ばれ不機嫌に振り向く
それを追いかけるように現れたのは彩月
イラ…ッ
「この子が話あるって」
小林は彩月の手を取り、俺の方へと諭す
どこか楽しそうな小林の笑顔が、さらに俺のイライラを上昇させる
「……なに」
彩月に対しても冷たくなる
モゾモゾと俺の前で困った様子の彩月に、小林は親しげに声をかける
……なんだこれ
なに見せられてる、、?
「…帰る」
吐き捨てるようにそう言うと
彩月は一生懸命に叫んだ
そして渡された水族館のチケット
彩月は俺と一切目を合わせない
顔を真っ赤にして語尾も聞き取れないほどモゾモゾ喋る姿は
正直……可愛い
断る理由もなくチケットを受け取り、日曜日の約束を交わした
俺の頭と心臓は忙しい
イライラした感情は
なぜか穏やかになる
もはや病気だ
こんな自分のことを嫌いになる前に
そろそろ
彩月に正面から向き合わないとな
チケットを貰った時の別れ際
図書館へと戻って行く彩月の向こう側で
満足そうに立つ小林が目に映る
そして俺と目があった瞬間
不敵な笑みを見せた
分かりやすい
小林からの挑戦状だ