私の好きな人




水族館はリニューアルしたばかりということもあってか、物凄い人で溢れていた


久々の水族館


いや、水族館だけじゃなく

レジャー施設全般もう何年も来てない



とりあえず入場ゲートの列に並んでみたけど


隣の彩月は

どこか落ち着きない様子



すげー人だもんな、、


まるで幼い少女のように、この人混みを怖がる彩月



俺にはそう見えて


男らしくリードしないと、って意識した



でも、話しかけてくる彩月に対して「うん」しか返せない俺


なぜなら俺の頭の中は



いつ言おう…

どのタイミングで…

何から話そう…




…………想いを伝えることに必死だった




そして小さなチャンスが来た



彩月から貰ったチケットは特別優待券


周りが持ってるチケットと違うと分かって、彩月に確認




列を抜け出し、入場ゲートまで人混みをくぐり抜け歩く



咄嗟に掴んだ彩月の手


一瞬は無意識


でも1度掴んだこの手を離さないよう必死に力を込める



初めてだ


彩月と手なんて繋ぐのは





何を思う…?


彩月は今、俺に手を握られて


どう思う…?




………何も感じてないか


人混みの中、離れないよう繋がれただけの手



それだけのこと。





なぁ彩月




俺は今、目の前の人混みの景色なんて全然目に入ってこない


前に進む俺の足なんて、意識ない



握った彩月の手が


ヤケドするんじゃないかってほど



一点に集中して熱い……





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