私の好きな人






水槽を眺めながら彩月は楽しそうに喋る


俺は"うん"しか答えれない



薄暗い屋内の中で水槽から照らされる綺麗なブルーが、彩月の雰囲気を一層良くするから……


…いや、彩月の雰囲気だけじゃない


彩月の声が遠くなるほど緊張してしまう俺も


この瞬間の雰囲気に酔ってるのかもしれない





デートスポットだけあって



なにか



マジックにかかったような気分になる



催眠中とでも言おうか、、





とにかく俺の体の右側は



彩月のせいで感覚を失っている




右側に立つ彩月を


直視出来ない



ここまで弱ってしまうのか……?


好きだと気付いただけなのに。









突然、彩月は黙り込んだ



見なくても分かる




彩月の視線は俺に向けられてる




なんで、そんなに見んだよ




きっと彩月も無意識なんだろう



こんな分かりやすく会話が無くなるのは不自然だ



まぁ俺は"うん"しか言えてないけど




彩月は何を考えて俺を見てる?


返事が素っ気なくて悲しんでる?


つまらない?


不思議がってる?




直視も出来ず
あまりに長く見られてるのにも我慢できず



「……なに」



なんて絶望的な暗いトーンな俺



明るくしたいのに、頭の中がグチャグチャで


正反対の態度になってしまう



まるで小学生だな




「……ごめんなさい」



そう照れた様子の彩月に

俺の心臓は強く跳ねた




なんで…



そんなに可愛いのか…



そんな分かりやすく照れられたら


俺だって我慢できなくなる




咄嗟に彩月の名前を呼んだ



ちょうどいい静けさ



視線は水槽のまま




たった一言だ




今なら言ってもいいんじゃないか




タイミング的には間違ってないよな




煩い俺の心臓が



告白のタイミングを知らせる






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