私の好きな人
「ねぇ彩月、今日の放課後空いてる?」
「今日?」
「うん。もし空いてるなら付き合って欲しくて」
「今日かぁ…」
「あれ…無理そう?」
無理というか…なんというか…
今、私の自転車は故障中なわけで、今日も良平に駅まで乗せてもらってきたわけで、もちろん帰りも《たまたま》を装って良平を待ち構えようとしていたわけで……→最低。
桜子も最寄りの駅までは一緒なんだけど、家は反対方向だし…
さすがに桜子には頼めないというか…
そもそも歩けや!…なのは重々承知なわけで…
ただ
自転車が直るまで限定の良平との時間
少しでも…噛みしめたい
…なんて…
私に興味のない良平からすれば、とても迷惑な話なんだけど
「おーい!」
「あ…」
「まったく…どこに飛んでいってんのよ」
「ごめん…」
考えだしたらマイワールドに飛んでいってしまう私
…怖いです
「無理そうなら大丈夫だよ。私も急ぎじゃないし」
「え?あ…いや、大丈夫だよ!」
「え?大丈夫なの?なんか凄い考えてたから」
「いやさ…実は」
自転車のことを話すと
「そうなんだ。それは勿体ない」
「勿体ないって…」
「せっかくの良平くんとの時間だもんね。そりゃ考えるわ」
桜子は知っている
私が好きな人
頭が良いから飲み込みも早い
いやいや…
それにしても最低だな私!
「駅からは全然歩けるから問題ないし、付き合うよ!」
それに、良平だって
こんなの迷惑に思ってるに違いない
《たまたま》作戦もバレてるしきっと…
「ほんと?やった!」
「ふふ…何するの?」
「実はね、もうすぐ先輩の誕生日なんだ。プレゼント見に行きたくてさ」
「おー…それは一大イベントですな」
桜子も恋してる
1つ上の先輩に
桜子の表情は一気に華やいだ