雨に恋するキズナミダ
夏海は片手に畳んだ椅子を五脚ほど抱えて歩く。わたしもそれに続く。あと少しで全部片付きそう。
何だかんだで生徒会とヘルプで十人は集まったから早い。それにしても、みんな知らない顔ばかり。生徒会も様変わりしたな。
「ねえ、雪乃。どうして髪が伸ばせるの? 途中で切りたくならない?」
「そこが女子っぽくないのよ」
「もう、私は男子になる!」
「いやいや、男子になってどうするの」
椅子を舞台下ストッカーに入れながら、バカみたいな話をする。わたしたちの会話っていつもこんな感じ。
だから、真剣な話ってなかなか出来ない。
悩み相談したいけど自分のことあまり話したことないし、どう切り出そうか。
「意地悪雪乃!」
「意地悪してない」
「にゃあ」
「……にゃあ? 夏海、何言ってんの」
「私じゃない」
わたしたちは振り返って声の主を探す。それはすぐに見つかった。足元に擦り寄ってくる真っ白な猫。
「ああ、中に入っちゃ駄目だよ。シロ」