雨に恋するキズナミダ

「雪乃、決まった」

「早!! え、わたし必要だった?」

「何かね、名前を入れるサービスがあるらしくてさ。キーホルダー型の時計に彼の名前入れて、プレゼントしようかなって」



 夏海が持っているのはバッグとかに付けられるキーホルダーの時計。ポケットウォッチってやつかな。


 全体が可愛らしいカッパのキャラクター。その手にはクローバー。足元にスペースがあって、そこに名前が入れられそうだ。


 肝心の時計はお腹を開けると出てくる。ものすごく可愛い。



「店員さん、名前って一箇所しか駄目なんですか?」

「そんなことはありません」



 わたしが聞くと、店員さんがすぐに答えてくれる。



「じゃあ、時計の蓋の部分。裏側に名前は入れられますか?」

「……そうですね。こちらでしたら大丈夫です」



 訳が分からないという顔をする夏海。せっかく恋人同士なんだから、絶対にこっちの方が喜ぶはず。



「雪乃、どういうこと?」

「中には夏海の名前を入れるの。その方が素敵でしょ」

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