雨に恋するキズナミダ
「思い出したか?」
「うん……少し」
「倒れてから一時間も経ってない。雪乃は救急車で運ばれてきた。ずっと夏海がついていたんだが、今は電話しに行ってる」
「そうなんだ。悪いことしちゃったな」
せっかく二人でオムライス食べようと思っていたのに、わたしってば最悪だ。
「そうだ。秋くんは? どうしてここにいるの?」
「電話したんだ。そしたら雪乃が倒れたって夏海が出てさ。びっくりして来ちまった」
そっか。
多分、勉強する日にちの相談で、秋くんが電話をかけてくれたんだ。たまたまわたしが倒れて、タイミングよく夏海が出てくれた。
また二人に迷惑かけちゃったな。
お店の方も。後で謝っておかなきゃ。
「今日はもう帰っていいらしい。ただ、一回だけ診察に来てほしいってさ」
「うん。ありがとう」
秋くんがわたしの肩に手を置く。
じっとわたしを見つめて離さない。だから、目をそらすことも出来なくて。
沈黙に耐えられなくなってきた頃、その睨むような目が少しだけ穏やかになった。