雨に恋するキズナミダ

「あの事件の後、ずっと守らせてくれただろ?」

「それは……同じ学校に冬弥先輩がいたからだし、秋くんがどうしてもって言うから」



 秋くんはずっとわたしの隣にいてくれた。


 退学して学校に通えなくなった後も、わたしを迎えに来てくれた。毎日、登下校は一緒。


 それが日常だったんだ。


 でも冬弥先輩が卒業して、わたしが三年になると秋くんに頼る理由がなくなってしまった。それに秋くんも就職が決まって忙しくなってきていたし、これ以上の迷惑をかけるわけにはいかない。


 だから、

『もう大丈夫だから。そんなにわたし弱くないよ』

 って言った。


 恋人でもないわたしたちが一緒にいる特別な時間。わたしは自らそれを終わりにした。すごく寂しかったけれど。



「だって秋くん。これ以上、迷惑を……」

「いいから黙って守らせろ」

「え?」

「頼むから。そうやって一人で悩んでるの、見てらんねえ」



 抱きしめられて、わたしの耳元でまるで泣いているみたいな掠れた声で言う。



「雪乃を守りたい」
< 40 / 60 >

この作品をシェア

pagetop