雨に恋するキズナミダ

 あまりにも必死で、震える声と抱きしめる腕の強さに泣きたくなった。


 痛いからじゃない。秋くんが優しくて、それが嬉しくて、わたしを見てくれているのをすごく感じたから。



「わたし、悩んでるなんて言ったことないのに」

「あんな顔して電車乗ってりゃ、誰だってわかるぞ」

「見てたの!?」

「遠くから」

「話しかけてよ」

「あの混雑で近づくのも大変だろ」

「まあ、そうだけど」



 わたしもぎゅっと力を込めて秋くんの腰に手を回す。
 スーツに顔を埋めてから、顔を見られないようにしながら言った。



「いいよ」

「え?」

「その代わり、ちゃんと守ってよ」

「よし。じゃあ朝は一緒に行こう。同じ電車だから」

「……ありがとう」



 その時、バタバタとうるさい足音が聞こえた。離れる間もなくその人が部屋に入ってきた。


 まさに抱きしめられている現場を見られたわけだ。



「あー。タイミング間違えた?」



 夏海は困った顔をして一歩下がる。



「待って、夏海。大丈夫だから」

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