愛があれば、それで
それでもやっぱり俺は俺で。
誘われたら断れない。
誘われて、断ろうと考えるとあの時の感情が蘇る。

だから、誘われたくなくて。
そういう話題は避けるようにしていても構わず相手は俺に踏み込んでくる。



『腹立つけど、でも好きだから』



そんな俺を泣きながらいつも迎えてくれる。
そんな結花のことを俺は大好きだ。

だから、子供ができたと結花に聞いたときはすごい嬉しかった。

そして、さすがに結婚をしたら誘って来るような人もなかなかいないみたいで、安穏の日々を送っている最中だ。



「本田さんが好きなんです」



この時までは。
俺の生活はもう壊れることなんて、ないと思っていた。



「いや、あのさ……」



歓迎会の帰り。
酔っ払ったから主役だけど、二次会にはいかないという彼女を俺も帰るからと家まで送ることになった。

ふらついてる彼女を支えながら、鍵を開けて彼女の部屋に入った途端、抱きつかれた。

『俺には奥さんが』そう言葉を繋げようとしたのに、言葉なんてやっぱり出せなかった。

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