愛があれば、それで
「本田さん、今日これるんですか?」



あたしの歓迎会が開かれる、金曜日。
朝に本田さんに話しかけた。



「うん、行けるよ」


「そうですか。楽しみにしてますね」



今日しかないと思った。
身重の奥さんがいるからか、彼は定時で帰っていく。
愛妻家なのかと思ったら、結婚する前はそうでもなかったとほかの女の子が言っていた。

たしかに結花も何度も浮気されたと言っていた。
「断れないから」と。

断れないのが今も変わらないなら。
あたしでも大丈夫なはずだ。
どうしても、彼を自分のものにしたかった。

結婚をしていない相手じゃないということも。
社会的に許されることじゃないということも。
わかっていたけど、そんなこもよりも彼を手に入れたかった。
彼にあたしを好きになって欲しいと思った。

いままでの感情とは違ったから。
あの頃はただ、結花に先をこされたことが悔しかった。

今回は、結花が先に知り合っているのだから仕方ない。
でも、出会う順番を間違えたのだと思いたかった。

恋というのは盲目で。
相手の気持ちなんか考えられなかった。

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