愛があれば、それで
「結構酔っちゃいました……」



一次会も終わる頃、隣の席になった本田さんの肩にもたれかかった。



「大丈夫?関さんそんな強くないんだね」


「そうですね……」


「主役だからって頑張らなくてよかったのに」


「場の雰囲気壊したくなくて……はぁ」



そんなの嘘。
自分のしおらしい嘘に心のなかで笑う。



「二次会どうするの?」


「主役だし、行かなきゃですよね」


「大丈夫だと思うよ。こいつら、ただ飲みたいだけだから。結構辛そうだし、俺も帰るから送るよ」



計画通りだった。



「すみません、迷惑かけて」


「いやいや、俺の奥さんもお酒弱くてさ。歓迎会でこんな感じだったの思い出すよ」



ふと、優しい顔になった彼。
本当に結花のことが好きだと思い知らされる。

でも、そんなこと関係ない。



「その時も一次会で?」


「そ。俺、奥さんに一目惚れだったから、送っていくの名乗り出たんだ」


「で、付き合ったんですか?」


「はは、そんなとこかな」



あたしの知らないふたりの馴れ初め。
そんな話を聞いたって、どんだけ彼が結花のことを好きだとわかったって。

あたしの気持ちはもう止まらなかった。

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