愛があれば、それで
「関さん、酔っちゃったみたい。俺帰るし送っていくよ」


「え、透!まじかよ」



本田さんの言葉に横にいるあたしをちらっと見る桜木さん。



「なんだよ。俺が帰るのなんて知ってるだろ」


「あぁ、そうだな……」



あたしのことを気にしつつも、深くため息をついて頷く桜木さん。

あたしがなにかをするなんて、確証もないし。
本当にお酒に弱くて、酔っているかもしれないし。
だから、何も言えない。
そんなとこだろう。

邪魔ものはいなくていい。
あたしと彼のあいだに邪魔なもの。
それはすべてなくなってしまえばいい。

彼の瞳に映るのは、あたしだけでいいのだから。



「本田さん、ありがとうございます」



揺られるタクシーのなか、意識が朦朧な振りをして、彼の手をぎゅっと握った。



「うん。大丈夫だよ」



そんなあたしの行動に怪訝な顔をするわけでもなく、背中をさすってくれる。

そんな彼の腕の中に抱かれたかった。
早く触れて欲しかった。
早く、彼を手に入れたかった。

これは、あたしと彼の純愛の始まりに過ぎないとおもっていた。

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