愛があれば、それで
「病院すぐきてって。起き上がれる?支えるから車まで行こう」



行きつけの産婦人科に電話をして、状況を説明すると「もう多分生まれるので、早く来てください!」と言われた。



「いつから?いつから陣痛きてたの?」



こんなに絶え間なく痛くなるなんて、陣痛が始まってすぐではないことは俺でもわかる。
父親学級とかいうので習った。



「痛いなぁって思い始めたのは昨日の朝」


「朝!?」



昨日の朝、でかけるときの結花はいつも通りだった。
いつも通り、行ってきますのときにキスをして。
それで出かけていった。



「でもその時はまだ不定期に痛む感じだったから」


「ごめん、会社で歓迎会があったから言い出せなかったんだよな?」



運転しながら、助手席に座る結花の手をぎゅっと握る。


「言わない判断をしたのはあたしだから。透くんは気にしないで」



そんなことを言っても、だんだんと感覚が短くなっていく痛みにひとり耐えていたかと思うと、申し訳なさが広がっていく。

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