愛があれば、それで
「1人にさせてごめん」



それだけじゃない。
1人で痛みに耐えてるあいだ、俺はなにをしていた?
違う女と快楽に溺れていたんだよ。

断れなかった。
そういえば、済むのだろう。
でも、もし、陣痛の進みがはやくて、間に合わなかったら?

家でひとりでいるときにもしも生まれてきてしまったら?

そう考えただけで怖くて仕方なかった。

この時、俺は酷く後悔していたはずだった。
もう、誘いには乗りたくない。
誘われたくない。

横でお腹を抑える結花の手をしっかりと握りながらまた誓っていたはずだった。



「透くんにそっくり」



生まれてきたどこからどうみても俺の子である女の子。
その子を抱いて、俺は家族を守ると誓いをたてた。



「俺、お前らを絶対に幸せにするから」



俺の腕で眠るわが子の柔らかい頬に手を触れて、絶対にこの子もそして、結花のことも。
守り抜くと決めたはずだった。

俺の気持ちは硬かった。
ほかの女なんてどうでもよかった。

ただ、ひとつのトラウマが発生しなければ。

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