愛があれば、それで
「その人は、あたしが知ってる人かもしれない」


「……え?」



桜木さんの目が大きく開かれる。


「もしかして、桜木さん知ってる……?」


「知らないよ。知るわけないよ」


「うそ。桜木さん、わかりやすいんだって」



桜木さんはいつもこう。
わかりやすい。
嘘なんかつけない。



「知らなかった。菜美があたしの代わりに働いてたなんて」


「……っ」



何も言わない桜木さんの口が物語ってる。
あたしの産休代理で働いてる人が菜美で。
そして、いま透くんと毎日体を重ねてるってこと。



「結婚してもこうなるのかぁー」


「透が断れないのはさ……「違うよ。そうじゃないの。菜美のことみんな好きになっちゃう」



学生時代と同じ。
透くんまでも菜美のことを好きになった。



「透は、あの子のこと好きなんかじゃないよ!」


「ううん。いままでとは違う。菜美のことみんな好きになるもの、あたしと付き合ったひと」



……そうして、あたしは振られていく。

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